ヒーローから読み直すアメリカ文学

著者 | 佐々木 みよ子 編 |
---|---|
ジャンル | 文学・芸術・ノンフィクション |
出版年月日 | 1985/01/01 |
ISBN | 9784326851744 |
判型・ページ数 | 296ページ |
定価 | 本体2,900円+税 |
ネット書店を選択 |
---|
目次
序章 「武器は手放せない!」―アメリカン・ヒーローの形成
1 ウェスタンのヒーロー
2 フロンティア大西部の自然
3 ナッティ・バンポー型のヒーロー
4 「森の悪魔」型のヒーロー
5 「ソルト川の雄叫び野郎」
6 ウェスタン・ヒーローは本物の紳士!
7 文明と荒野の衝撃の果て
Ⅰ 男性神話の呪縛と暴力―ロマンティック・ヒーロー
第1章 男同士のきずなを求めるヒーロー・ナレーター
―メルヴィル『白鯨』
1 男だけの世界
2 越境するアイデンティティ
3 親友のきずな
4 断ち切られるきずな
5 権威の否定
第2章 男の自我のロマンス―ホーソン『大理石の牧神像』
1 ロマンスと近代的視線の矛盾
2 ドナテロの失楽園の意味
3 近代的結婚の成立
4 失われた姉妹愛
5 近代的自我とカップルの形成
第3章 過去に固執する男たち―フィツジェラルド『グレート・ギャツビー』
1 1920年代のアメリカ
2 古い価値観への固執
3 「資産家の息子」への憧れ
4 男性にとっての脅威
5 フィツジェラルドの予測する未来
第4章 男根神話の呪縛を受けた男たち―ディッキー『脱出』
1 現代アメリカの神話
2 都市と辺境の対立の物語
3 狩猟による通過儀礼の物語
4 男根崇拝の物語
5 呪縛からの解放、そしてさらなる呪縛
Ⅱ 周縁に生きる男の悲哀と欺瞞―アンチ・ヒーロー
第5章 愛を標榜する心やさしきヒーローたち
―サリンジャー『ライ麦畑でちかまえて』『フラニーとズーイ』など
1 愛を掲げるアンチ・ヒーロー
2 いい女は見つけるのがむずかしい
3 ジェンダーに分裂するホールデン
4 聖人は美女に弱い
5 愛という名の隠れ蓑
第6章 愛に飢えたヒーロー―ライト『アメリカの息子』
1 ライトとの作品
2 さまよう視線と不可視の目の恐怖
3 博愛主義者の冷たい目
4 愛のまなざしを得て
5 ライトの予言
第7章 民族の歴史を背負うアイリッシュの男たち
―オニール『詩人気質』『日陰者に照る月』『氷屋来る』
1 オニールとその時代
2 過去回帰願望の父
3 母性願望の息子
4 弱き者たちの生きる道
5 心の拠り所を求めて
Ⅲ 女が語る男の真実と可能性―ネガティブ・ヒーロー
第8章 ネガティブ・ヒーロー恋愛作法―ウォートン『歓楽の家』
1 ウォートンと「非行動派」弁護士
2 「白い奴隷」を売買するニューヨーク上流社会
3 ディレッタントの奴隷保有願望
4 「新しい男」の真実
5 「新しい男」を描くことの限界
第9章 因習に囚われた男たち―スティーブンス『マラエスカ』など
1 ダイム・ノベルの出現
2 ダイム・ノベルとなったセンチメンタル・ロマンス
3 階層社会の男たち
4 二つの捕虜物語
5 男たちの世界へ
第10章 女の叫びに耳を澄ます男―ネイラー『リンデン・ヒルズ』
1 空虚な「黒檀の宝石」
2 ウィリーの心の師
3 「心の鏡」を失った人びと
4 ウィラの心の旅
5 二つの出会い
第11章 男たちの沈黙が語るもの―キングストン『アメリカの中国人』など
1 中国系アメリカ人作家の台頭まで
2 社会の周縁にさまよう男たち
3 封印される男たちの真実
4 社会への定着と一世たちの変容
5 同化への長い道のり
あとがき
索引
内容説明
女の言葉でアメリカ文学のヒーローを再定義する画期的な試み。文明による荒野の制覇を歴史的背景として、アメリカ文学は男性中心に展開してきた。女性作家やヒロインからの読みかえを行ってきた著者たちが、敢えて正面からアメリカン・ヒーローの神話に取り組んだのが本書である。 『白鮫』『グレート・ギャツビー』『ライ麦畑でつかまえて』など19作品から、23人のヒーローが登場。伝統的価値観の体現者からマイノリティまで、男性像の典型と多様性とがともに浮かび上がる。 『ヒロインから読むアメリカ文学』の姉妹編。